路上ライブ


 【 目次 】

 ♪ 第1話 「 葛藤 」
 ♪ 第2話 「 路上の天使 」
 ♪ 第3話 「 2時間 」






♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪





 
第1話 「 葛藤 」



  僕が初めて路上で唄ったのは、2006年9月からなんです。
  丁度その頃の僕は、僕自身自分の唄やライブに自信が無くなっていた時だったんです。

  「自分の唄は人の心に届いているんだろうか」
  「このまま唄い続けていいんだろうか」
  「元気でない自分がライブで元気な唄を唄って良いんだろうか」

  色々な事が重なって、めちゃめちゃテンションも低く、気持的にも精神的にも、めいっている時でした。
  そんな自問自答の日々が数日間続きましたね。
  今では笑って話なせるんですが、この2週間で体重が7Kg落ちました。

  ある日、自分自身に問いかけてみました。
  「このままで良いのか。このままでは、終わってしまうぞ。」
  良い訳がないのは分かってはいるのですが、なかなか答えが見出せなかったですね。

  この後もライブの予定がかなり入っていました。
  「早く何とかしなければ・・・この気持ちのままではライブなんて・・・。」
  焦る気持ちが入り乱れて頭がパンクしそうなくらいでした。

  答えを出そうとする気持ち、気分転換したいという気持ちがあったのかな〜。
  そして一つの方向に顔を向ける事にしました。
  「原点に戻ってみよう。ギターが好きで唄う事が好きでガムシャラに弾いていた頃に」
  「そして自分の唄が、まったく知らない人に届くかどうか、どれだけの力があるか試してみよう。」
  そう思い路上で唄ってみる事にしたんです。

  自分の中では
  「誰も足を停めてくれなかったら自分の唄に力がないんだ。唄う事をやめよう」
  そう決めて路上へ行きました。
  僕にとっては、これからの事を決める一つの賭けでした。

  初めて路上に行った日は曇り空。
  その時の自分の気持を形どっているかの様でした。

  駅前に到着したのは良いのですが・・・
  「どこで唄って良いのやら、何か場所での決まり事があるのか」勝手がサッパリ分からなかったですね。
  路上で唄っている人に尋ねてみました。
  「すいません。今日、初めて来たのですが何処で唄ったら良いのでしょうか?」
  「各自(路上で唄っている人の)決まった場所があるんですか?」

  すると、その青年が
  「決まった場所は無いですよ!何処でも唄って良いんですよ。」
  「ただ遠鉄百貨店の軒下は駄目です。直ぐに警備員が飛んできますから!」
  「遠鉄の軒下前が、人通りも多いんで良いと思いますよ!」
  「頑張ってください。」
  親切に教えてくれました。

  教えてもらった「遠鉄百貨店の軒下前」へ行き唄う事にしました。
  この場所が、この日以来現在に到るまで、この先も僕の路上ライブの場所となっています。

  この日から路上ライブがスタートしていきました。


  index





 
第2話 「 路上の天使 」



  唄い始めの曲は「明日求めて-西へ西へ-」。
  この唄から唄おうと最初から決めていました。唄う事が最後になるかもしれない路上ライブでしたから。
  僕にとっては思い入れのある曲です。
  僕の頭の中では
  「ギター弾いて唄えば、直ぐに足を停めて聴いてくれるだろうな」
  そんな事を思っていました。

  しかし、さすが初路上です。僕が思う程に甘くは無かったです。
  唄っていても誰一人、足を停めてはくれません。僕の目の前を足早に通り過ぎていく人ばかりです。
  「駄目なのかなぁ〜。」
  「やはり、唄に力が無いのかなぁ〜。」
  そんなネガティブな事ばかり考えてしまってしまいましたね。

  そう思いつつ唄っていると、一人の制服を着た女子高校生が僕の前で足を停めてくれました。
  唄い終わり
  「こんばんは。」「聴いてくれて、ありがとうございます。」と挨拶とお礼を。
  しかし、心の中では
  「ヤッター!停まってくれた。唄を聴いてくれた。」
  かなりの決意で路上をやっていたので、安心と嬉しさがこみ上げてきました。
  でも、そんな気持は自分の中だけにして、また唄い始めました。
  テンション上がって行ったのは紛れもない事実ですね。

  彼女が言うには、
  「今、塾の帰りなんですけど、通りかかったら唄声が聞こえたんですよ。
  その声に引き寄せられて来てしまいました。」

  「そうなんですか。ありがとうございます。」

  「いつも唄っていらっしゃるんですか?」

  「今日から唄い始めたんですよ。でも誰も足を停めてくれなくて・・。
  あなたが初めて足を停めてくれた人なんですよ」

  「え〜。そうなんですか」

  少し照れ笑いを浮かべていましたね。
  「塾帰りだから、きっと一曲くらい聴いてかえるんだろうな〜。。」って思いましたが・・・。
  真剣に僕の唄を30分も聴いていってくれました。

  感謝の気持と受験生と言う事でエールを送る意味で
  「もうやめよう」を気持を込めて彼女の為に唄わせてもらいました。
  何か思う所があったんでしょうか、唄を聴きながら彼女は涙を流してくれたんですよ。
  「えっ!」って思いましたが、その姿を見て僕の方も込み上げてくるものがありました。
  「彼女の心に届いた!」
  そう思える瞬間でした。

  「受験頑張ってください」

  「はい」

  そして彼女は、良い笑顔を残して帰って行きました。

  数時間後、彼女からメールが来たんです。
  「受験のプレッシャーから塾へ行くのが嫌で嫌で、しょうがなかったです。
  でも、今日唄を聴いて頑張ろうって思いました。昨日までの私とは違います・・・。」
  このメール嬉しかったですね。

  彼女の気持ちを変化させたのと同時に
  「ネガティブになっていた自分の唄が人の心を動かした。」
  「自分の唄にも未だ力が残っているじゃないか」
  「人の心に届く唄を唄い続けていかなければ」

  僕の唄が彼女に力を与える事が出来た。心を動かす事が出来た。
  しかし、彼女によって僕自身が「また唄おう」「唄い続けよう」という気持ちを持たせてくれたんです。
  今でもこの時の事は鮮明に覚えています。

  僕は「ライブの神様が、彼女を僕の元へ送ってくれたんだ。」と今でも思っています。
  そして彼女は僕にとって
  「もう一度唄う事、もう一度ライブの世界へ引き戻してくれた天使だと思っています。」
  彼女と出会わせてくれた事に感謝します。


  index





 
第3話 「 2時間 」



  ライブの神様から「もう一度唄う事」を許された「浦山修司」
  新たな気持ちで路上ライブを続けて行きました。

  そんなある日、何時もの様に唄っていると一人のおっちゃんが・・・
  足を停めてくれました。
  しかし!!!見るからに「お酒が入っているんじゃないかな?」と思わせる感じです。
  1曲聴いた後、いきなりそのおっちゃんが「にいちゃん!今唄っているのはオリジナルか??」
  「そうですよ!」
  「オリジナルは良いよな〜。なかなか路上で唄っている奴でオリジナル唄っている奴、居ないんだよな〜」
  「もっと他の唄も聴かせてくれよ」
  「良いですよ」
  その後、何曲か唄いました。

  そして、そのおっちゃんが
  「今俺は、日本全国回ってスカウトしているんだ」
  「昨日は、豊橋見てきた。その前は名古屋を見てきた。」
  「にいちゃん、プロになる気あるか??」
  そんな質問をされました。

  自分の中では「なんだ〜・??このおやじ、いきなり来て好きな事喋ってやがる」
  「なんなんだ??酒が入って良い気持になっているからか〜〜〜!!!」
  と、心の中で思いましたが、顔には出さずニコニコと(汗)
  「もう歳ですんで、プロにはなる気がないですよ」
  「そうか〜!残念だなぁ〜。」
  と、言い残して少し離れた場所から電話を掛けていました。
  「面白い奴がいたけど、プロになる気はないんだって」と、こちらにも聞こえる声で話しています。
  そして、おっちゃんは姿を消したのでした〜〜!!じゃんじゃん。

  「よし、これでおっちゃんも居なくなったし、何時ものようにまた唄えるよな・・・。」
  どうも自分は、お酒の入った方は苦手で苦手で・・・(^^;)
  最初は、笑顔で受け答えしているのですが、同じ事を何べんも言われるとね・・・。。。。
  そんな苦手意識が路上ライブの時間も PM 7:30〜PM 9:00 頃まで決めさせたのかもしれませんね。

  気持ち好く唄い出したのも束の間、浜松駅方面からこちらを目指して歩いてくる男が一人。
  少し、いやいや沢山、めちゃめちゃ嫌な予感です。
  「あちゃ〜!さっきのおちゃんだぁ〜!!帰ったんじゃなかったのか〜〜〜!!!」

  そして、大方の予想通りおっちゃんは、僕の前に腰を下ろしました。
  「帰られたんじゃなかったのですか?」
  「いやいや、これを買いに行って来た。」
  するとおっちゃんは、徐にお茶のペットボトルを差出し僕に差し入れて下さいました。
  おっ!もしかして、見かけに寄らず良い人かも・・・?(さすが、物に弱い浦山くんです。)

  この後も、おっちゃんを前に何曲か唄いました。
  唄い終わると、おっちゃんが一曲毎の唄について感想を言ってくれます。
  (まるで、何かのオーディション受けているような感じです。)
  しかし、おっちゃんの感想が驚くなかれ音楽的に的を得ているんですよ!
  はっきり言って、これには、びっくりしましたね。(このおっちゃん何者?って感じです。)

  唄い始めて早2時間、そろそろ帰り支度です。
  僕の前に2時間も居座り?基、2時間も聴いて下さって、ありがとうございました。(汗)
  ただ、おっちゃん酒が入っていたからなのか、他に足を止めてくださった方に、しつこく話しかけていました。
  何度かおっちゃんに「そこに座って静かに聴いてくれ!」と穏やかに?話しましたが、ダメでした。
  折角足を止めてくださった方に申訳なくて、この出来事が一番残念でした。

  公の場で唄っているから「帰れ!」とか「来るな」とかは言えません。
  めちゃめちゃ難しい事なんですよね。ただ、最低限のマナーは守って聴いてもらいたかったですね。
  この後も、3年に渡り路上ライブは続いていくのですが、おっちゃんとは出会う事はなかったですね。
  今度、素面の時のおっちゃんと音楽の話をしてみたいなぁ〜って思いましたね。


  index


















































































































































inserted by FC2 system